〜八月一日〜





  「ねぇ、陸。なんか最近ヒカリ達の様子おかしくない?」

  「……芽瑠の気のせいじゃねぇの?」

  こんにちわ、滝沢芽瑠です。
  今は夏休み真っ最中で、今日は陸のお部屋でデートです!

  私が最近気になっていたこと…
  それを今目の前でテレビゲームをして遊んでいる彼氏である浅野陸に聞いてみたんだけれど、反応が薄い…。

  「ちょっと…ちゃんと聞いてよ」

  私は今さっきまで抱えていた私専用であるお気に入りのクッションを陸の後頭部目掛けて投げつけた。

  「いってー…」

  さすが私!見事にクリーンヒット☆

  「ちょっ…芽瑠!今いいとこだったのに」

  陸が怒って軽く私のことを睨んでくる。

  「ふーんだ。陸が私の話をちゃんと聞こうとしないからいけないのよ」

  「…で。芽瑠は何で八神さんたちを見てそう思うの?」


  さかのぼること二年前。
  どうしても7月末あたりぐらいからだろうか、ヒカリ・本宮くん・高石くんの3人が
  そわそわ・こそこそする。

  それが2年続いているのだ。これは何かあるに違いない!


  「毎年何してるんだろ」
  「そんなに気にすること?」

  「だって…仲間外れみたい」

  芽瑠はほんとは少し寂しかったのだ。
  うれしそうに、懐かしむように何かを話すヒカリたちの姿を見て……。




  「…これ。芽瑠にプレゼント」

  陸の手から差し出されたのは某テーマパークのチケット。

  「え…でも陸…」
  「夏休みのうちに2人でいこ。母さんが行って良いってタダ券くれたから」

  陸は陸上部で期待の選手で、お家は家族で経営しているパン屋さん。
  陸は家の手伝いだって疲れているはずなのに毎日やっていて…私もそれのお手伝いをする。


  だから普段からあまり遠くにデートだって行けないし、私も今年の夏は陸の家のお手伝いか、
  受験勉強で遠出は無理だなって思っていたのに。


  「たまには芽瑠だって息抜きしないとな?」

  やさしく微笑む陸。
  いつも私のことを考えてくれていて…

  そんな陸が私は大好き。

  「ありがと。陸!」


  私は嬉しくて、その気持ちを陸の今すぐ伝えたくて…
  勢いよく陸に抱きついた。

  陸はちょっと驚いたみたいだったけれど、やさしく受け止めてくれて…
  私に私に優しく言う。

  「八神さんたちだって、芽瑠が聞けば案外簡単に教えてくれるかもよ?」
  「…うん、そうだね私が変な気を使ってただけだね」

  抱きついたら、陸の体温が体に伝わってきて…なんだかとっても安心した。

  「気にすることなんてはじめからないんだよ。だってさ八神さんと芽瑠は友達だろ? 芽瑠は芽瑠らしくしてればいいんだよ」


  「ありがと陸。大好き」
  「知ってるよ。芽瑠がオレにべたぼれなくらい」

  「あ…ちょっと」
  「でも、オレもお前と同じように芽瑠に惚れてるから」
  「もぅ…ばか」

  自然と顔が近づく中あと2センチのところで下から声がした。


  「陸ー、芽瑠ちゃんちょっと下手伝ってくれない?」
  「あっ…はーい。今行きます」

  私が勢いよく顔を離しておばさんに返事をしたから、陸は少し不機嫌。

  「ちぇ…邪魔された」

  「フフ…また今度ね」


  今日は記念日8月1日。
  初めて陸から告白されて気持ちに気づいた特別な日。


  自然とつながれた手には、2人の歴史とその分大きくなった2人の愛でできた絆が

        「これから先もずっと芽瑠だけだよ。」って言っているみたいで、なんだかとっても嬉しかった。






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